コラム

2009/01/13

神河内から上高地に至る(長野・HK)


▼古くは「神河内」と表記されていたとか。今では有数の観光地として名高い長野県・上高地は、今春までの深い眠りに入っている。その代名詞ともなっている河童橋周辺は、都会の歩行者天国並みの賑わい。平成8年に通年マイカー規制となったものの、新釜トンネルも開通して訪れるひとは後を絶たない

▼上高地の魅力は何といってもその自然景観にある。河童橋から穂高連邦を望む上高地お決まりの絵柄だけではなく、手前の大正池から河童橋まで続く遊歩道。さらに梓川の上流にある明神池まで右岸左岸とも散策道が整備され、各自思い思いの自然との触れあいが楽しめる

▼この明神池の畔には穂高神社の奥宮があり、こちらのパンフレットには「神降地」と記されている。当地の一日の始まりとなるご来迎は、まず池の脇にそびえる明神岳の主峰をほのかに照らし、第2、第5峰を紅く染めていく。その様はまさに降臨と呼ぶにふさわしい神々しい情景である

▼池の対岸にある旅館・明神館はその昔、上高地を世に知らしめた故ウエストン卿が徳本(とくごう)峠を越えて宿泊した施設。釜トンネルが開くまでは表玄関とされていた。池と宿をつなぐ現在の明神橋は4年前に架けられたばかりだが、梓川の護岸に整然とそろえられた白い玉石ともども、周囲の景観のなかで異彩を放つことはない

▼人間の英知と技術は、長い地球の営みが生み出した手付かずの自然に更なる魅力を加える。実はだけでなく、そこに至る道を築き、トンネルを開け、ハイヒールの若者も車椅子の身障者も、多くの人達がそれを享受することを可能にしていることも忘れてはいけない。(長野・HK)

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