コラム

2009/01/19

欲張らない美しさ(山梨・CT)


▼茶道のお稽古ではしばし、先生が見本となるお手前を披露してくれる。流れるような動きにみとれた後、いざ自分がやってみると、どうもぎこちない。ついつい次の動作に気をとられ手元がおろそかになる。先生に言わせると「ムダな動きが多い」のだそうだ

▼暮れ、新年はイルミネーションで街が華やぐ。先日、友人と東京に出かけたときもライトアップされた東京タワーを見て、思わず歓声を上げた。昨年12月23日に開業50周年を迎えたこの塔は、間もなく東京スカイツリーに電波塔としての役目を譲る。しかし東京のシンボルであることには、この先も変わらないだろう

▼いよいよ受験シーズンの到来。そんな中、受験生たちの間で話題になった本がある。東大合格者が受験生時代に書いたノートを200冊以上集め、分析・解説したものだ。この通称「東大ノート」、実に良くできている。特徴的なのは教科にかかわらず簡潔に整理されて書かれていることだ。この応用は企画書やプレゼンでも使えると、ビジネス書としても注目を集めている

▼茶道の所作も東京タワーも東大ノートも共通しているのは「美しさ」だ。所作が洗練されているのは稽古と努力を重ねてきた結果である。今も多くの人を魅了するタワーは緻密な設計とそれに真摯に応えた職人たちの技術の賜だ。合格に導いたノートは受験生が目の前にある課題に丁寧に取り組んだ成果だろう

▼常に美しいものは欲張らないし、威張ったりもしない。その佇まいはいつも謙虚だ。だからこそ時代が変わっても人は感動を覚える。この先も美しさを求める姿勢だけは持ち続けていたいと切実に思っている。(山梨・CT)

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