コラム

2009/02/24

働く日を待つ機械たち(群馬・HM)


▼吹きすさぶ北風にただ耐えるようにじっと立ちつくす機械がある。工事中のマンション。その最も上。施工者が破綻し、建設工事がストップしてから動くことのなくなったタワークレーンがそれだ。その姿は、辛さにただ耐えているようにも見え、働く場を失って唖然としているようにも見える。動きを止めてから数カ月、いまだに工事は再開されていない

▼先日、取材先で「オークションに建設機械が増えたね」と言われた。実家が農家でもやっているのだろうか、ネットオークションのページでミニユンボなどを昨年夏頃からチェックしていたら、秋から年末に向けて随分と数が増えたと言う。建設機械が不要になった人が増えたということだろうか。「これも不況の影響かな」とその人は言う

▼100年に一度と言われる景気後退。あるテレビ番組で契約更新ができずに職を失った派遣社員の青年が出ていた。働いていたのは一流の電気メーカー。婚約者もおり、近く結婚する予定だった。結婚は延期。別れるかもしれないと青年。「天国から地獄だ」と言う

▼働ける。働く意欲はあるし、体力もある。働けるのに働く場所がない辛さ。婚約者がいる、家族がいる。「2000人削減」と一言でかたづけられているが、それぞれに生活があり、人生がある

▼寒空に身じろぎもせず立ちつくすタワークレーン。あるいはネット上で次の持ち主を待つミニユンボ。彼らの姿がテレビの青年と重なる。この機械達が盛大に喜びの声をあげて動き出す頃、日本全体の景気もよくなっているのだろうか。1日でも早い将来、そうなっていてほしいとただ願うばかりだ。(群馬・HM)

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