コラム

2009/03/03

受け入れることの大切さ(茨城・HS)


▼ブラッド・ピット主演の映画、『ベンジャミン・バトン―数奇な人生』を観た。80歳の老人として生まれ、年を重ねるごとに若返っていく男の人生を描いた物語だ。アカデミー賞で3部門を受賞。日本でも公開2週目で興行収入1位を獲得するなど、評判は上々だ

▼上映時間は3時間弱。「若返る人生」という事前情報だけで映画館に行ったものだから、フィッツジェラルドの原作を脚色したということも制作費1億6000万ドルということも、後から知った。個人的には満足できたが、派手なアクションやハリウッド的なヒーローは登場しないので、退屈と感じる人もいるかもしれない

▼観賞後、原作の文庫本を読んでみた。原作は短編で、さすがに映画とはかなり違っていた。映画は周りの人間が次々と死んでいく喪失感を老人ホームという舞台で描いており、それが彼の子供心に達観を育んでいく。一方、原作の彼は生まれながらの老人で、子供へと成長するに従い心も子供のそれになっていく

▼原作が年代ごとの彼を淡々と描写するのに対し、映画では数奇な人生の苦悩とそれにも負けずに生きようとする彼の前向きさを描いている。現実を受け入れること。永遠に続くものなどないということ。決して悲観的にならず、自暴自棄になることもなく、彼はその人生を全うした

▼人は誰しも、「老い」から逃れることなどできない。それを悲しいと思うことは仕方のないことだが、現実とは、向き合うことで初めて変えていくことができるもの。ただ嘆くばかりでは何も始まらないと改めて実感させられた。誕生日を迎えた翌々日に観たこともあり、心に残る一作となった。(茨城・HS)

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