コラム

2009/03/16

膨らんで、しぼむ(東京・JI)


▼仕事を終えて帰宅中、なんとなくノドが痛い。家に帰って鏡を見ると、左あごの下が大きく腫れている。腫れはコブシ大もあり、触るとひどく痛む。突然のことなので悪性腫瘍ではないだろうか、不安である。妻は「カエルみたいだね、ゲコゲコ」と励ましてくれるのだが、場合によっては手術による切除もあるのではないかと恐怖だった

▼耳鼻咽喉科に行くと、触診もせずに紹介状を渡され大学病院に行かされた。幾つもの検査を受けて出た結果は「皮下気腫」。つまり皮膚の下に空気が入り、膨らんだのである。重い物を持ったり排泄時に力んだりすると発生することがあるという。これだけ激痛が走るにも関わらず「いずれは、しぼむ」と言われ、薬も処置もなく帰された

▼最近しぼんでいるのは民間マンション市場である。平成20年の1年間に全国で発売された民間マンションは9万8037戸。前年比26・7%減であり、また16年ぶりに10万戸を割り込んだ。当然、販売総額も前年比25・0%減と大幅に縮小した。減少は建築確認申請を厳格化した建築基準法改正の影響が続いているためだという

▼マンション発売戸数の過去最多は、平成6年の18万戸。その市場が、まさに半減するまで落ち込んでしまった。ましてや大手不動産会社の倒産が次々と起こるような事態を、いったい誰が想像したろうか

▼ノドは、医者が言ったように1週間で元に戻った。どうやら皮膚の下にたまっていた空気が、体に吸収されたようだ。世の中なかなかバランス良く行かないのは常だが、今度はノドではなく、建設不動産市場がふくらむことに期待したいところである。(東京・JI)

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