コラム

2009/04/02

人の血と汗と涙(群馬・AN)


▼群馬県長野原町の八ッ場ダム建設予定地を通った。数年前、この地域の担当記者であったため、何度も何度も足を運んだが、そのころとはまったく光景が一変。多数の橋梁の架設やJR線の付け替え工事などが順調に進んでいた。同ダムの建設計画の発表から50年以上が経過したが、ようやく今年度本体工に着手する

▼「黒部の太陽」が先日テレビで放映された。黒部川第四発電所の建設を舞台とし、さまざまな人間模様とともに、ダムサイトの工事現場へ資材を運ぶための大町トンネル掘削工事の苦闘が描かれている。破砕帯からの大量の出水など、実に臨場感のある迫力シーンが多く、筆者もテレビにかじりついて2夜連続で見続けた

▼「黒部の太陽」は昭和43年、三船プロダクションと石原プロモーションの共同制作によって初めて映画化され、三船俊郎と石原裕次郎の主演で大ヒットした。だが、映画化に至るまでには、専属の監督や俳優の引き抜きを禁ずる「五社協定」の問題などから紆余曲折した経緯があった

▼八ッ場ダムの建設も紆余曲折の連続で、現在でも各地で反対運動が続いている。そんな中、現地再建を断念し、新天地での生活を求めて先祖代々の土地を離れた地元住民もいる。しかし、半世紀以上もダム建設に翻弄されながらも必至になって現地再建を望んでいる住民もまだまだ多い

▼「黒部の太陽」で描かれたトンネル掘削の苦闘は、ダム本体工事のためのもの。八ッ場ダムでも本体工事の入札が今年9月に行われる予定だが、その前段階の工事に血と汗を流した人々がいる。そして、ダム本体の着工を前に涙を流している住民もいる。(群馬・AN)

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