コラム

2009/05/01

消費者庁への期待と危惧(茨城・HS)


▼関連法案が衆院本会議で可決され、消費者行政を一元化する『消費者庁』が、近く誕生する運びとなった。福田前首相が創設を表明し、麻生内閣が昨年9月に法案を提出して半年が経過した。「消費者目線の行政」を掲げるこの機関には、多くの期待が寄せられることだろう

▼消費者庁が扱う事案は、「表示」「取引」「安全」の3つに大別される。「表示」は、言わずと知れた偽装問題がまず頭に浮かぶ。鰻の産地偽装だったり汚染米の偽装販売だったり、煮え湯を飲まされた人も多いはず。「取引」では、独自の電子マネーを発行していた会社の会長が詐欺容疑で逮捕された事件など記憶に新しい

▼命の危機にも繋がる「安全」は、中でも特に重要視して欲しい項目だ。例えばガス湯沸かし器による一酸化中毒死亡事故。20年以上前から同様の事故が起きていたにもかかわらず、ガスの種類で担当が分かれているため、経産省内で連携がとれず対策が講じられなかったという

▼商売という仕組み上、売る側の力が強いのは自然なことだ。買う側にしてみれば、買う買わないの選択権はあるにしろ、それが生活必需品であれば、売る側の性善説を許容するほか術がない。だからこそ、売る側の倫理が厳しく問われるのは必然とも言える

▼もちろん、消費者庁は消費者のモンスターコンシューマー化を促すものではない。守ってくれるものがあるからといって甘えるばかりでは、生産者も困窮してしまうだろう。商売でもっとも大切なものは両者の信頼関係と言われる。消費者庁を安易な駆込み寺にしてしまったら、この不況はさらに長引くのではないだろうか。(茨城・HS)

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