コラム

2009/05/11

調査基準価格の解釈(東京・UT)


▼国土交通省は新年度からから調査基準価格を2%程度引き上げた。1年前にも5%程度上げていたため、2年連続、合計で7%アップさせた計算になる。引き上げによって、予定価格に対して84%程度に設定される工事が多くなるようだ

▼調査基準価格の本質とは、そもそも何だろう。それは、会計法に基づき設定されている。同法第29条の6第1項では、最低の入札価格が調査基準価格以下であった場合に調査を行い、契約の内容に適合した履行がなされないと認められる場合は、次順位者を落札者にできることになっている

▼つまり調達における品質確保の観点から運用されていることがわかる。ただ昨今ではその解釈が、産業政策も加えたものへと劇的に変更されつつあるように感じる。本来は品質確保の観点から設けている価格で、だからこそ国交省は、落札率と工事成績評定点の関係性のデータを分析した上で、見直してきた。しかしここにきて、雇用など産業政策を前面に打ち出す声が圧倒的になっている

▼端緒は、自民党の品確議連が4月に打ち出した提言。地域経済を守り地域の雇用を維持する観点を含め下限価格を設定すべきと掲げ、目安は90%程度とした。その後、政府がまとめた「経済危機対策」の中でも「公共事業などの契約における最低制限価格の引き上げなど地域経済・雇用の下支えにもつながる入札契約制度の改善の促進」という一文が盛り込まれた

▼本来は品質確保のためにある価格だったが、現在の経済危機からすると、それだけではいられないということだろう。こうなったら、各発注者には産業政策の視点を思い切り打ち出してほしい。(東京・UT)

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