コラム

2009/07/01

古来より愛される建物(群馬・AN)


▼6月上旬、入社以来初めて長期休暇を申請し長旅を楽しんだ。行き先は中国地方。国譲り神話として有名な出雲大社などを拝観したが、日本古来の建築様式に感動するとともに、改めて建物にまつわる歴史や伝承を学んだ

▼出雲大社での参拝は一般の神社とは異なる二礼・四拍手・一拝。また、注連縄(しめなわ)も一般の神社とは反対の張り方となっており、特異な面が多い。規模も近年の発掘調査の結果から「奈良の東大寺を超えるものだったのでは―と注目されている

▼拝観途中、親しい建築会社の社長から「境内の中に庁舎(ちょうのや)と呼ばれる建物がある。有名な建築物だよ」との電話を頂いた。昭和38年に竣工した鉄筋コンクリート造の建物で、菊竹清訓氏による設計。この地方独特の刈り取った稲束を懸け干しておく『はでば』の形を取り入れ、横桟の間には特殊なガラスがはめ込まれるなど、採光に工夫が施されている。木造の社殿が立ち並ぶ中、コンクリートの打ちっ放しの景観が意外にマッチしている

▼新居探しで不動産屋を巡り、非常におしゃれな外観のデザイナーズマンションを紹介された。立ち会った大家が入居を1日でも早く進めるがごとく、内部の良い点を列挙しはじめたが、ふと筆者が天井の染みに気づき尋ねると、二の句を告げなくなった

▼古来、大衆に愛される建物は、誰が何と言おうと人を引きつけるもの。『庁舎(ちょうのや)』も古き良き建物が並ぶ境内の中、モダンなスタイルが景観に溶け込み拝観者の足が絶えない。「男は黙って…」という文言があるが、良き建物も「黙ってうんぬん」ということにほかならない。(群馬・AN)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら