コラム

2009/08/18

世界の中心に立入禁止(茨城・HS)


▼オーストラリアの先住民アボリジニの聖地ウルル、通称エアーズロック。年間10万人以上が入山する、世界で2番目に大きい一枚岩だ。1987年には、世界遺産として登録された

▼この高さ約350m周囲約9?の巨大な物体への入山が、早ければ再来年の10月にも全面立入禁止となるらしい。所有者であるアボリジニの意向や、観光客によるゴミのポイ捨てなどを踏まえ、オーストラリア政府が検討を進めているというものだ。もし自分の大切な場所が踏み荒らされ、その上ゴミまで撒き散らされたなら。そう考えると、それもやむをえないことに思えてくる

▼日本で特に注目を浴びるようになったのは、『世界の中心で、愛をさけぶ』(片山恭一著)がベストセラーになった頃からだ。この小説は映画やドラマ、舞台にもなり、泣ける純愛小説ブームの先駆けにもなった。出版不況もどこ吹く風、発行部数は300万部を軽く超え、国内の史上最高記録も更新している

▼「ウルル」とは、アボリジニの言葉で「世界の中心」や「地球のヘソ」という意味だそうだ。その入山が禁止されたら、『世界の〜』も話が違ってくる。まさかタイトルを『世界の中心の近くで、愛をさけぶ』に変更するわけにもいくまい

▼入山禁止の1番の理由が観光客のマナーの悪さだとしたら、これはもう自分たちを責めるしかない。この施策を横暴だという人がいたら、それこそまさに横暴だ。もっとも、世界の中心でなくとも愛は叫べるし、国内にだって叫ぶ場所はいくらでもある。安・近・短でも愛は愛。心がこもっていればいい。愛する2人がいる場所こそ、立入り禁止の世界の中心だ。(茨城・HS)

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