コラム

2009/09/11

ビジネスモデルの転換(茨城・KK)


▼新刊本の高い返品率改善へ―大手・中堅出版社数社が新たな販売方法「責任販売制」に乗り出した。定価に占める書店の取り分を現行の22%から35%に引き上げる代わりに、返品する際の負担を書店に求めるというもの。出版不況の一因とも言われる4割に及ぶ返品率を改善する狙いがある

▼高い返品率の背景に「委託販売制」があるのは明らかだろう。書店は売れ残った本を返品する際、仕入れ値と同額で出版社に引き取ってもらえる。書店は多様な本を思うままに店頭に並べられる。書店側の利点と反対に出版社側の負担は大きい

▼最大手コンビニエンスストアはこのほど、売れ残り弁当などを加盟店が値引きする「見切り販売」を容認する方針を決定した。以前から消費期限が過ぎた弁当や惣菜の廃棄には「もったいない」の声が多かったが、廃棄ロスの損失が全額加盟店負担との契約に非難が集中。公正取引委員会の排除命令を受け容れた

▼書籍・雑誌・新聞、音楽ソフトなどは「再販制度」により定価販売が守られている。現在では対象は著作物に限られている。一見、資本主義経済の趣旨に反するようだが、先進主要各国でも、著作物の多様性を維持し、文化の保護を図るためという目的で、時限再販、部分再販も含めて運用されている

▼市場規模が縮小しているのに、当面の利益確保のために新刊点数ばかり増える出版業界。かたや店舗数4万を超え、飽和状態のコンビニ業界。従来からのビジネスモデルの転換が急務だが、大量断裁や大量廃棄に対する「もったいない」という消費者の声に背を向けては立ち行かなくなるのは明白だろう。(茨城・KK)

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