コラム

2009/10/09

聞く地蔵と聞かぬ地蔵(茨城・KK)


▼過日、水戸市の建設会社の安全大会で、講師のカウンセラーが昔話を紹介した。『赤い鳥』時代の作家・宇野浩二著『聞く地蔵と聞かぬ地蔵』。「カウンセリングのなんたるかをわかりやすく教えてくれる―」との前口上だった

▼昔、ある小さな村に滞在した旅のお坊さんが、2体のお地蔵さまを置いていった。「山のお地蔵さまは『聞く地蔵』で、願うことはみな叶えてくれる。野原のお地蔵さまは『聞かぬ地蔵』で、黙っているだけで、願ってもいっこうに叶えてくれない。けれど、山の地蔵よりも野原の地蔵に祈る方がいいのだぞ」

▼村人が両方のお地蔵さまに祈ったところ、『聞かぬ地蔵』はただ黙っているだけだったが、『聞く地蔵』に願ったことはことごとく実現した。「悪い疫病が流行りませんように」「豊作になりますように」と、はじめは一般的なことを祈っていた村人も次第に「村一番の金持ちになりますように」と欲望がエスカレート

▼しまいには「隣の家が貧乏しますように」「向かいの家の人がみんな病気になりますように」―願いはすべて実現するものだから、隣近所は仇同士のようになり、殺伐とした村になってしまった。再び例のお坊さんが現れ「いいかげんに欲張るのをやめて、聞かぬ地蔵さまの方へお参りしたらどうだ」

▼人生は荒波に満ちているが、受け止めてくれる相手がいれば、試練や困難を乗り越えることができる。野原の地蔵さまに、愚痴を言うなりして、あからさまに自分をさらけ出していると…聞かぬ地蔵が実は聞いてくれていたのだ!村人が野原の地蔵にお参りしているうちに、元の平和な村に戻ったのだった。(茨城・KK)

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