コラム

2009/10/19

秘仏保護の意味(山梨・RA)


▼山梨県立文学館で、11月23日までの期間で五百羅漢像図と日本最古の法隆寺金堂壁画の模写の公開をしているが、この機会に是非とも見に行きたいと思っている。仏の尊顔を排していると、この世の全てから心が解き放たれ、「休む」気持ちになれる

▼仏像といえば、東京国立博物館で「イケメン仏像」として知られる阿修羅像が展示され、長蛇の列を作っていたことは記憶に新しい。「何を今更」とミーハーを批判する気持ちもあったが、仏像の持つ本来の意味は「仏・法・僧」。静かに人だかりを見つめる仏像を見て、少し自分の気持ちを恥じた

▼仏像は仏像でも、秘仏と呼ばれる仏像をご存知だろうか。拝むことを目的に作られたはずの仏像をあえて本堂の奥にしまい込んで見ることを禁じ、その代わりに「お前立」と呼ばれる像を拝む。そして、神道にもよく似た風習を持つものがあることから、この秘仏という像は、目に見えない神を拝むという日本古来の風習が、神仏習合の際に変化したものであるという説があり、貴重な資料として大切にされてきた

▼ところが近年、その絶対に見てはいけない秘仏の「中身」が、文化財の保護という言葉のもとに次々とその姿を現し始めた。中身は美しい彫刻から朽ち果てた棒、時には何も入っていないこともあるという。しかし、そうして暴かれた後に保護されるのは美しい彫刻のみだという

▼美しいものを保護することは大切なことだ。しかし、本当にそれ「だけ」でいいのだろうか。秘仏が「保護」され、実は空っぽになった本堂を見ても、そこには何も無いのだ。複雑な心境になるのは筆者だけだろうか。(山梨・RA)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら