コラム

2009/10/27

削減背景に見えない将来像(茨城・HS)


▼ひと雨ごとに秋が深まり、先日出かけた栃木県の湯西川の温泉地もそろそろ紅葉が見ごろだろう。気楽に行ける場所なので、本格的な冬の到来を前にもう一度行っておきたいものだ。紅葉の中、湯に浸かりながら水陸両用バスが走る湖を眺めるのを思うと心が弾む

▼その近くに、国主導でダムができようとしている。総事業費約1840億円。受益エリアは栃木・茨城・千葉の3県にまたがり、昨年11月には本体工事の起工式が行われた。完成予定は平成23年度。関連事業を含め、工事は順調に進んでいるようだ

▼ところが、これに前原国交相が冷や水を浴びせた。国直轄の48ダム事業を一時凍結する方針を表明。関係する自治体や地元からは、いっせいに困惑の声が上がった。筆者の行ったダムも当然この中に含まれている。本体は工事中のため完成まで進む見込みだが、ほかの事業がどうなるかは分からなくなった

▼新政権は今、公約に掲げた政策の財源を確保すべく、旧政権がまとめた補正予算案にメスを入れている。国交省は各省の中でも最大の9000億円以上が削減されそうだという。福祉や教育などと比べて削りやすい公共工事が槍玉に挙げられたのは火を見るよりも明らかだ

▼将来を考えて子ども手当てを充実するのは悪くない。しかし、将来に必要な社会基盤の整備をおろそかにしてしまったら、将来を生きる人々はどう思うだろう。事業ごとの精査もせず、中止ありきで一律に決めてしまうことは何より危うい施策だ。政治主導もいいが、きちんとした将来像がなければ誰が安心できるのか。政治は「やっぱり無理でした」では済まされない。(茨城・HS)

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