コラム

2009/12/14

60.3%の波紋(長野・EM)


▼ダムに代わる新たな治水対策をまとめるべく、国交省が有識者による検討会議を立ち上げた。ダムの継続・凍結を判断する基準は来夏の中間まとめに示される見通しで、進行中の143のダム事業の見直し議論は、これをもとに進められることになるという

▼この有識者会議の初会合から20日ほど前、長野県で補助事業による県営ダム本体工事の入札が執行された。政権交代で反対派の動きは活発化したが、知事は建設・中止・再開と紆余曲折あった経緯を踏まえ「あらゆる角度から吟味し尽くした。ほかに選択肢は無い」との姿勢を貫いた

▼入札は価格だけによらない総合評価方式で実施。結果は、予定価格比63・3%と最も安い価格を提示した共同企業体が落札候補者となった。大規模な工事ほど効率化の余地はある。無論、業界環境や、最低制限価格を設けられないWTO案件だったことも低入札の一因であろう

▼ダンピングの議論はさておき、広く注目を集めたこの入札。気掛かりなのは「63・3%という数字だけが一人歩きし、「公共工事の落札率は60〜70%で当然」などと誤った認識を広く植え付けはしまいかということ。これ以上のあらぬ風評は、過酷な環境で踏ん張る従事者に、唯一のよりどころである使命感すら失わせかねない

▼さりとて現在行われている低入札調査で候補者が失格となった場合、県民がそれをすんなり受け入れるとは考えにくい。候補者は価格以外の評価項目で技術提案も最高点。県は価格、提案とも最良の提示をした相手と契約しないことについて、よほどの説明責任を問われる。結末が呼ぶ波紋は、ことのほか大きい。(長野・EM)

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