コラム

2009/12/22

理想のあとさき(茨城・HN)


▼何気なくテレビをつけると、よく知られた住宅リフォーム番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」が放送されていた。その時の内容はリフォーム直後を映した通常の構成ではなく、以前の放送から数年経過した建物が、どうなっているかを取り上げた特別編。完成からその後を追った構成が、筆者にはとても新鮮に感じた

▼「その後が見たい」と思う視聴者の意見に応えてのスペシャル番組だろうが、放送する側からすれば、ちょっとした冒険かもしれない。なぜならリフォーム後から数年が経過した姿は、リフォームした時よりも明らかに古く見える建物を映すということ。ドラマで言えば、ハッピーエンドの後を見るということ

▼夢を見ているかのようなすばらしい出来事から、一気に現実に戻ってしまうような感覚に陥ることもあり得る。しかし、それでは筆者がはじめに感じた、あの新鮮な気持ちは何だったのだろうか。もしかしたら、理想ばかりでなく、その後の現実を見せたことに共感を憶えたのかもしれない

▼前原誠司国土交通大臣は、建設専門紙の共同インタビューで「建設業者50万社のうち20万社の維持は難しい」と発言した。「なんてことを言うんだ」と憤りを感じる人もいると思う。だが、この発言をどうとらえるべきか

▼確かに、夢を見せてくれる番組も良い。ハッピーエンドであれば気分も晴れやかだ。だが、現実はそんなものではなく、時間は同じように流れて行き、建物も劣化していく。そんな現実を直視し、どういう道を歩むべきか真剣に考えてほしい―。前原大臣の発言には、そんなメッセージが込められているのかもしれない。(茨城・HN)

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