コラム

2010/03/02

泣き落しのエピソード(東京・UT)


▼一昨年、近所の販売店で小型自動車を購入、先日、1年点検に行ってきた。時間の経つ早さを実感しつつ、同じ年の担当営業マンとの再会を楽しんだ。変わらない前向きな姿勢に、大いに触発を受けた

▼購入する際は、どういったセールストークを展開するのか、興味深く応対した。相手を見て判断したのかどうかは定かではないが、結果は、ほとんど泣き落し作戦だった。「ノルマが厳しい」「上司から夜中まで説教された」「同期はほとんど辞めた」「同僚が自殺した」などなど。このほか時折、自身のささやかな楽しみも織り交ぜてくる

▼ほとんど悲惨な話なのだが、営業マンの独特のキャラクターもあってか、悲壮感があまりない。雰囲気、話術。脂が乗っているプロの中堅営業マンという印象だ。ささやかな喜び、趣味の話もほほ笑ましい。現在のところ実践できてはいないが、大いに参考になった

▼実は、その営業マンからの購入を即決せざるを得ない事情が発生した。ペーパードライバーにも関わらず試乗した(今振り返ると止めるべきだった)妻が、左折する際、反対車線の一番前に停車していた車に擦ってしまったのである。後部座席に座っていた筆者と、助手席の営業マンは真っ青に。相手方との保険のやり取りなど、すべてを担ってもらうことになり、真摯に対応してもらった。その結果、この人から買うしかないと、ほぞを固めたのである

▼販売店史上、前例のない事態を起こしてしまったことになる。憎めない泣き落し営業マンが繰り出すセールストークの、新たなエピソードになっているだろうことは、想像にかたくない。(東京・UT)

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