コラム

2010/04/22

生活を支える技術の継承(群馬・AN)


▼4月も後半に。群馬県庁でも入庁組が本格的に始動している。その一方、職務を終え、古くから土木行政を支え続けてきた技術系職員が入れ替わりに県庁を去った。団塊世代の退職による技術力不足が全国的に問題視される中、群馬県県土整備部では数年前から技術向上委員会を設置し、技術の継承に努めている

▼山口県岩国市の錦川に架かる錦帯橋は、全長193mを誇る木造の5連アーチ橋で、日本三名橋にも数えられるなど、築城技術と組木の技法を最大限に生かした希代の名橋。その錦帯橋を目の前にした感想は「素晴らしい」のひと言。河原から橋裏を見上げると木組のようすがわかり、その匠の技にも驚嘆した

▼延宝元年(1673年)に完成した錦帯橋だが、昭和25年、キジア台風による大増水で流失してしまう。その後、再建の調査に入った技術者らは異口同音に「錦帯橋の工法は、現代力学の法則に合致していて何ら改善の余地はない」と口にしたそうだ

▼橋は、河川で分断されている右岸と左岸をつなぐ役割を担い、人々の生活には欠かせないものとして、全国津々浦々に架けられている。橋だけではなく、多くの構造物が人々の生活を支えている

▼錦帯橋の修復記録は藩政の史料などにほぼ残っており、歴代の棟梁の名前までわかっているという。桁や橋板などの架け替えや補修が度々行われているにもかかわらず、原形どおりに修復できるのも技術の継承があってのこと。地域の歴史や信仰などが伝承され続けているのと同様、技術の継承も子々孫々と語り継がれていく。人々の生活はその下支えがあって成り立っているのだから。(群馬・AN)

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