コラム

2010/06/02

甦る遠い夏の記憶(山梨・SA)


▼本紙では時々、建物の改修工事の記事を掲載する。記事を解説する意味で、建物の撮影に行く。先日、ある自治体で、老朽化した建物を改修する取材のため、その現場写真を撮った。夏に差しかかるこの時期の蒸し暑さや、草や葉の青い匂いに、ふと昔の記憶が甦った

▼少年時代などに、古い廃屋などを探検した経験はないだろうか。4〜5人のグループを作り、中でも強い者が隊長で、他は部下。入ってはいけない、と言いながらも、怖いもの見たさで勝手に探ったものだ。今では罪になるかもしれない危険なことだが、廃墟の探検は冒険心をくすぐったものだ

▼本屋の写真集売り場には、そんな廃墟の写真を集めた本がある。中でも、『廃墟ディスカバリー2』(小林哲郎・著)では、日本各地に存在する、廃墟や住民のいなくなった団地や内部が荒れ果てている廃ホテルなどの写真が掲載されている。廃墟の中で、特に印象深かったのは、長崎県にある、端島、通称・軍艦島の写真だ。ここには、日本最古のコンクリート造の建物が残る貴重な場所。多くの人が住んでいたであろう、昭和の古き良き時代の名残は、まさに異空間

▼せっかく、多くの人の時間と手間をかけて作られたものが、何らかの理由で使用されず、変わり果てるのは非常に残念だ。ただ何故か落ち着く気持ちになれるのはなぜだろう。それは、あの過ぎ去った少年時代の日の恐怖心や、探求心が心地よかったのかもしれない

▼そんな写真集を本屋で見かけたら、是非、懐かしい気持ちを甦らせてみてはどうだろうか。なにか現代では失いかけたものが見つかるかもしれない。(山梨・SA)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら