コラム

2010/06/08

アメンボの居るところ(茨城・HN)


▼少し高台にある我が家を下って、15分ぐらい歩いた先にある堤防。その堤防を目指して、休日に長女と散歩した。途中、見渡す限り水田風景が広がっている。ふと水田に目をやると、その上をゆうゆうと泳いでいるアメンボに目が止まった

▼そのアメンボを見て、月曜9時のドラマ「月の恋人」に登場するリュウ・シュウメイ(リン・チーリン)の台詞を思い出した。シュウメイは、汚れた上海の河川を見ながら「アメンボは水のきれいなところにしか生息しないよ…」とつぶやく。著しい発展と引き替えに豊かな自然環境を失った上海を、そう表現した

▼ことし3月末、農林水産省から土地改良予算箇所づけと交付金が各都道府県に配分された。その中身だが、茨城県の場合、事業費ベースでは通常の4割程度。そんな厳しい状況を、橋本昌県知事は「今年度はそれほど影響はないと思う」と述べた。だが、中盤以降の事業費確保には不安を隠さなかった

▼長女との散歩も、そうこうしているうちに堤防付近の歩道へと到着。堤防に着いた証にと、車両進入止めの標識にタッチする。「さあ家路へ帰ろう」と振り向くと、夕焼けに照らされた水田風景が、やけに美しい。帰る途中、今度は排水機場の建物が目に止まった。水田風景とは違って、その建物が夕焼けに照らされて余計にくたびれて見える

▼ここには上海のような発展も便利さもない。だが、豊かな自然があり、自然を維持するために、大切な公共事業が存在している。土地改良予算はそんな農業農村整備に充てられる費用。この素晴らしい水田風景を、都会に住む霞ヶ関の住人にも見てもらいたい。(茨城・HN)

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