コラム

2010/06/16

継承すべきものの大きさ(新潟・CS)


▼熟練大工を目指す訓練生の激減が報じられた(日経ホームビルダー2010年4月号)。「ストック時代の担い手が消えていく」と題し、昨年度、廃校や休校になった全国の訓練校をあげている。全国建設労働組合総連合傘下の認定校だけでも94年に1603人だった訓練生が09年には685人

▼政府はリフォーム等の推進を打ち出しているが、それを担う技能者の減少に歯止めがかからない。技術養成には時間と手間がかかり、ひとたび途絶えたら蘇らせるのは困難。事実の再認識が必要、と指摘する

▼新潟県ではどうか。県のテクノスクール該当課はここ5年ほど概ね定員の5割前後、ある職業訓練法人でも同様に推移し「県の補助が受けられるギリギリの数」という。技能大会では全国大会の優勝者も輩出した同校。人気は高いのではと問うと「他校ではもっと芳しくない」。全体の訓練生数の推移を把握する機関がないことも気になる

▼リフォームは新築よりはるかに高い技術を要する。先日、築160年の古民家再生を追ったテレビ番組を観た。江戸時代の家の大規模リフォーム依頼に、当初はどこも応じなかった。「熟達の職人でも10人中9人が壊すことを勧めるだろう」と現場監督。作業が始まると、工程ごとに歓声があがり、先人の技に唸る。現代の職人達も腕のふるいどころ、と目を輝かせた

▼現場監督は言う。「快適になればいいだけじゃない。長年住み慣れた家を感じられなければ、おじいちゃん、おばあちゃんはもしかしたら病気になってしまうかもしれない」。技術とともに、求められ、継承すべきものの大きさを示唆している。(新潟・CS)

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