コラム

2010/06/18

反体制のヒーロー(茨城・KS)


▼アメリカのハリウッドスター、デニス・ホッパー氏が5月末に74歳で逝去した。前立腺がんが骨に転移してのことだった。悲惨なことに5人目の妻との泥沼の離婚紛争が、病魔に拍車をかけたとも言われている。なんと3月には余命わずかにして「ハリウッドの星」の栄誉に輝いた

▼氏の代表作といえば、何といっても自ら監督、脚本も務めた1969年の名画『イージー・ライダー』であろう。パーツを大胆に切り落としたチョッパースタイルのハーレーダヴィッドソンのバイクに跨り、広大なハイウェイを疾走する姿は見るものに強烈なインパクトを与えた。同時に憧れでもあった

▼ドラッグ密輸で得た悪銭で、自由を求めて旅する若者2人。しかし世間の風当たりは想像以上に冷徹で虚しいものであった。「アメリカン・ニューシネマ」と呼ばれる反体制、反戦ムーブメントの草分け的存在である同作。当時のベトナム戦争によって醸成された混沌としたアメリカ社会を見事に映し出している

▼時を経て現代の日本。渦中の沖縄の普天間基地問題。相も変わらず沖縄の島民の心を振り回し、首相を退陣に追いやり、基地で働く兵士らも悩ませ続けている。戦争へ行きたくて行く人などいない。できれば行きたくないはず。それでも戦争が続くのは、ごく一部の権力者ら上層部の私利私欲によるものなのかと疑わざるを得ない

▼戦争は「無」しか生み出さない。人々を苦しめるもの。充分分かっているはずなのに止むことがない。この状況を反体制のヒーローであったホッパー氏は、雲の上でバイクを駆りながらどう見ているのだろうか…。(茨城・KS)

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