コラム

2010/06/25

真に頼みとするは(茨城・KK)


▼「いざとなったら、頼りになるのは、遠くの親より、近くの知り合いだよ」―NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』のひとコマ。初めての出産を間近に控えた布美枝にかけられた励ましの言葉が今も耳に残っている

▼「水はよく舟を浮かべ、またよく覆す」という言葉がある。水を部下、舟をトップにたとえれば、「部下はトップを支えるものだが、ときには謀反を起こして転覆させる」という意味。戦国時代は下克上の時代でもあった。天下統一を目指す武将たちは領国経営に加え、何よりも人心掌握に心を砕いた

▼細川幽斎は、理想の家臣団を「将棋の駒」にたとえた。殿様が王なら、まずは飛車のような重みのある補佐役が必要。また角のような思い切った戦略を立てる重鎮も。すぐそばには金や銀のように忠誠心の固まりのような駒を配置する。現場の指揮官には桂馬のように敵陣に突入する勇気ある駒が。そして最も大切なのは歩である。歩みは遅いが、敵陣に入れば金になる。歩ほど力を持った駒はない

▼江戸幕府三代将軍・家光には弟・忠長がいた。愚鈍な兄と利発な弟。当時、長子相続制度は確立されていなかった。忠長後継説が流れるなか、大御所・家康が「長幼の序」を示した。以後、御三家や後三卿は将軍家の親戚として遇されたが、幕政に関与することは許されなかった

▼家康以後の将軍たちは、2、3人を除いて、大半が凡庸な人物だったといわれる。幾多の困難を乗り越えて徳川将軍家が260年も続いたのは譜代の家臣団の支えがあったればこそ。「頼みとするは身内ではなく、忠義の家臣と心得よ」―家康の訓戒がよみがえる。(茨城・KK)

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