コラム

2010/09/02

トマトの表面に触れる(東京・JI)


▼小学生の息子の夏休みの宿題は、トマト栽培の記録だった。絵を描き、詳細を文章でつづる。虫メガネまで用いてじっくりと観察している。こんな時は、記者としてのアドバイスも有効だろう。「見るだけでは不十分」と指摘し、つるりとした実と毛の生えた茎の差異を手で触って実感せよと声をかけた

▼手で触れてみた息子は「トマトの実はざらざらしている」と記述する。そんなはずはない、どう見てもつるりとしているではないかと触れてみると、なるほど茎と同様に毛が生えてざらざらしていた。目に頼った不十分な観察で「つるり」などと思い込みをしていたのだ。アドバイスしたつもりが、逆に教えられる結果となった

▼思い込みとは、つまり思考停止である。それ以上は自分で追及することなく、物事を理解した気になっている。しかし、これでは進歩も成長もない。今回は対象がトマトだったが、それ以外でも多くの分野で思考停止しているのだろうと自戒した

▼経営コンサルタントの内田和成氏は、著書『スパークする思考』の中で「公私混同」を提案する。恋愛や料理や子育てや趣味において誰もが発揮する創造性を「仕事にそのまま持ち込め」と強調している。それが斬新なアイデアを生むことにつながると説明する

▼0歳児の娘にもトマトを観察させる。最初は恐る恐る触れるのだが、危険性がないことを知ると握りつぶしてしまった。「触れて観察させる」ことや「乳児に様々な経験をさせる」という子育ても創造性によるものと言えるだろうか。トマトをめぐる経緯を発端にして、アイデアをスパークさせたいものだ。(東京・JI)

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