コラム

2010/10/21

不完全な存在ゆえ(茨城・KK)


▼記録的暑さだった今年の夏が遠い日のように思われ、日に日に秋の深まりを感じる今日この頃で

ある。今年も、10月27日から11月9日までの『読書週間』に全国自治体や公立図書館で図書文

化の普及を主目的にさまざまなイベントが催される

 

▼『開高健の文学論』(中公文庫)に興味深い一節を見つけた。「どんな大長編でも、読んで心に

残ることは、たったひと言、一行あるいは一句。そのたったひと言が残るならば、すでにそれは名著

なのだ」。著名な小説家のお墨付きをいただいた感じで思わず膝を打った

 

▼印象的なひと言は書物の中ばかりではない。ある建設会社の安全大会で観た講演ビデオが忘れら

れない。講師は田舞徳太郎氏。中小企業の活性化を目的とした研修で知られる日本創造教育研究所の

代表だ。「人間と動物の違いは、自分たちの〝不完全さ〟の自覚の有無だ」と田舞氏。なるほど、動

物はそんなことには無自覚だから、何百年も前から今日まで、同じ生活を続けている

 

▼「このままでは、日本は潰れるぜよ」NHK大河ドラマ『龍馬伝』で、坂本龍馬が吐き捨てたセ

リフが耳に残る。欧米列強との国力の違いへの危機感が明治維新を成し遂げた。戦後復興から高度経

済成長を経て、日本は1968年には西ドイツを抜き、アメリカに次ぐ世界第2位の経済大国に

 

▼「すでに中国に追い越されている」、「世界3位の座にいるのもそう長いことではなさそう」ー

経済誌などでおなじみの見出しだ。国力はともかく、今の日本が活力や魅力あふれる国でないことは

確かかも。「自分は不完全な存在だ」ー田舞氏のひと言をかみしめたい。(茨城・KK)

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