コラム

2010/12/03

一生を左右した出会い(東京・UT)


▼都内のある私立中学校では、例年5月、調布市の都立神代植物公園で校外学習を行っている。同公園には約300品種5500本のバラが植えられており、理科の授業の一環として、生徒に植物への興味を持ってもらうことが目的だ

▼3年前、中学1年生のある生徒は、同公園の休憩所に興味を持った。大きな石造りで、園内の高台にある。屋根を支える柱は円柱形だった。生徒は柱が「なぜ丸いのか」という素朴な疑問を抱いた。引率していた担任の先生は、生徒の小さな「なぜ」を、その場限りで終わらせず、「考えてごらん」というスタンスを取った

▼生徒はその後の中学校生活3年間で、自発的に「構造物の破壊強度の実験」へ取り組んだ。最初は、厚紙を柱に見立て、三角柱、四角柱、五画柱をそれぞれ作成。上からおもりを載せて、厚紙が崩れる状況を比べた。その結果、五画柱が最も強度が強いことを実証した。N角柱とした時、Nの値が大きいほど、耐荷重は大きくなる。突き詰めると、強度が強いのは円柱という研究成果を自ら実証したのである

▼中1の時にこの成果を発表し、校内で高い評価を得た。その後は「高さと耐荷重の関係を調べる実験」を行うなど、さらに研究を発展させた。中3の終わりには、学校で毎年行っている研究発表会で、3年間の集大成を披露した

▼生徒は現在、高校1年生。まもなく、文系か理系かを選択することになる。先生によれば、中学入学時点では、将来の夢として法律関係の仕事を描いていたという。植物公園で感じた小さな「なぜ」。丸い柱との偶然の出会い。かけがえのないものだったに違いない。(東京・UT)

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