コラム

2010/12/04

道に人の歴史あり(長野・HK)


▼整然と、それでいてどことなく不規則に並べられた石の列に揺れる木漏れ日が、この上無く美しい。本来、堅強であるはずの石が優しく感じるのは、幾万の人々が歩んだ歴史がそう感じさせるのか

▼世界遺産に登録された熊野古道を訪れた。足を踏み入れたのは、その象徴ともいえる石畳が特に美しいとされる馬越峠。三重県紀北町から尾鷲市に抜けるおよそ2・6kmの峠道は、想像したとおりに多くのハイカーでにぎわっていた

▼この石畳が整備された時期は定かではない。しかし降水量が多い東紀州の地では、路面が雨で洗われないよう、石を隙間なく敷き詰められたのがその理由とされている。また傾斜を緩やかに、そして草木が生えないようにする目的もあったようだ

▼「誰が何のために」と歴史のなぞに想いを巡らすのも楽しいものだが、実際の土木作業は想像するだけで、喉に乾きを覚えそうだ。重機もなく、仮にあったとしても気の利いた作業道などない時代。人の力と知恵で成し得た業績にはただただ頭が下がる。そして、その時々で壊れた部分は修復し、補修して現在に至っているわけで、地元の人々にとって?道?がいかに重要であったかが垣間見てとれる

▼国立青少年教育振興機構の調査によると、子どもの頃に自然にふれた経験がある子は意欲や関心が高い傾向にあるという。近頃ではNPOや住民ボランティアが中心となり整備するトレッキングコースや里山が多いと聞く。何も?世界遺産?などと仰々しい肩書きなどなくても、近場にある自然に触れ、幾多の古人が残した踏み跡の歴史に想いを馳せるのも一興かと思う。(長野・HK)

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