コラム

2010/12/07

永年の平和伝達者(茨城・KS)


▼2010年もいよいよ年の瀬。ことしも多種多様な出来事があり、盛りだくさんな一年であった。この時期、雑誌やテレビなどでは「今年の顔」が発表されるが、筆者にとってのそれは何といっても戦場カメラマンの渡部陽一さんである。丁寧な魂のこもった言葉はストレートに心に響き、思わず引き込まれていく

▼今やニュースだけでなく、バラエティ番組などに出演している渡部さんは、イラク戦争で日本人では初となるアメリカ軍の従軍取材を遂行。2007年、ミャンマーでの反政府デモ取材中に、非情にも銃弾に倒れたジャーナリストの長井健司氏の教えも受けた。最近のテレビで見せる温厚な表情、姿からは想像がつかない、戦場での命をはった取材活動には感服である

▼印象的なのは彼の子供を大切に思う心。爆撃で瓦礫の山と化した街での子供たちの無邪気な笑顔の写真や、険しい顔でライフル銃を構える少年兵の写真を見せ、「戦争の一番の犠牲者はいつも子供」と切実に訴える

▼日本では全国各地の小・中学校などを回って講演会を行っている。そこでは、当たり前のように学校へ行き、勉強をして生きていけることのありがたさ、ありふれた日常が実はとても幸せであることを伝えている。実際に全国の不安定地域を駆け巡った氏だけができる珠玉の授業に違いない

▼先日、すぐ隣の朝鮮半島では北朝鮮が韓国を砲撃。臨戦態勢が続くが、日本も対岸の火事とはいかない。渡部さんはまた現地に飛ぶのだろうか。人類が生きる限り戦地を駆け回り、日々の平和の尊さを伝えてくれる彼は、今年のみならず、「永年の顔」である。(茨城・KS)

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