コラム

2011/01/08

コンクリしゃっくりコラム(東京・JI)

コンクリしゃっくり

▼コンクリートで覆われたトンネル状の地下鉄ホームで電車を待っていると、背後から「グム。グム」と聞いたことのない音が聞こえた。振り返ると、そこには駅員。彼は胸を押さえて歩いていたが、やがて「ウィ」と小さなしゃっくりをした。どうやら正体不明の音は、しゃっくりを無理に呑み込んで出てきたようだ。

▼いよいよ電車が到着する頃になり、駅員はマイクを持ってアナウンスを始めた。ところがしゃっくりは彼の意志では止まらない。「4番線に電車まウィります。ホーム内側でお待ちくださウィーッ」奇声がスピーカーを通してホーム全体に響きわたっていた。

▼民主党が掲げたスローガン『コンクリートから人へ』の存在感が薄くなっている。衆院選マニフェストで示されて以降しばらくは、八ッ場ダム整備中止方針や公共事業費の大幅削減、新成長戦略における事業効果の否定など、まさにスローガンに沿った展開が続いていた。

▼ところが最近は情勢が変わりつつある。公共事業の減少で地方経済がこれまで以上に厳しくなっている現状を踏まえ、自民党など野党はもちろん、民主党内からもインフラ整備への投資の必要性が叫ばれている。コンクリートの否定は、都市発展や安全な生活を妨げかねない。

▼地下鉄ホームに電車が到着する。ここで彼には業務が残っていた。ホームの安全を確認し、再びマイクを顔に近づける。しゃっくりは止まっていないが、仕事は遂行しなければならない。「4番線の電車、ドア閉まウィーッ」奇妙なアナウンスがトンネル状のホームに大きく反響する。電車はドアを閉じて何事もなく走り出した。(東京・JI)

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