コラム

2011/01/14

技量が問われるとき(茨城・KK)

技量が問われるとき

▼2011年も2週間が過ぎた。建設関係団体の賀詞交歓会も連日のように開催されている。華やいだ雰囲気の中にも、一向に出口の見えない建設不況に「今年こそ正念場」との緊張感も漂う。

▼腕前には絶対の自信を持ちながら、小才の利かぬ性格ゆえに「のっそり」とあだ名される大工の十兵衛。実入りの多い仕事を取り逃がし、長屋の羽目板や馬小屋の箱溝などの数仕事に明け暮れ、貧しい暮らしを送っている。そんな十兵衛に転機が訪れた―幸田露伴の傑作『五重塔』のプロローグである。

▼感応寺の五重塔の建立にあたって、棟梁として名高い源太に見積もりが命じられた。これを聞いた十兵衛は「自分にやらせてほしい」と名乗りをあげる。実績のない彼は、毎日仕事が終わってから、こつこつと作った五重塔の50分の1の雛形を持参し、寺の朗円上人へ直訴したのだ。

▼ここ数年で、一般競争入札と総合評価方式が広まった。受注から施工まで、発注者の指示どおりに行うというそれまでの建設業界の受身的性格を徐々に変えていった。従来の因習にとらわれず、公共工事の品質、建設業者の技術力の向上につながるとされる。

▼源太との確執の末、五重塔普請を請け負った十兵衛は、大工仲間の嫉妬や孤立を乗り越えて、塔を見事に完成させた。「技術提案力で受注はまずまず」「無理な価格競争を避けたため、売上は落としたが、利益は確保」―昨年を振り返ってさまざまな声を聞く。工事量の増加が望めない状況下、技術力、財務内容、安全管理等々企業の技量が今まで以上に問われることだろう。今年も建設業界の発展を祈ってやまない。(茨城・KK)

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