コラム

2011/02/17

民間委託とワーキングプア(埼玉・SW)

民間委託とワーキングプア

▼100年以上前に発刊された石川啄木の『一握の砂』。その中で「はたらけど はたらけど猶 わが生活 楽にならざり ぢっと手を見る」と歌われている。ワーキングプアが生まれている現代にもしっくりくる短歌。民間委託(指定管理者)は、ワーキングプアを生むひとつの事例ではないだろうか。

▼自治体が公共施設の業務を民間に委託する主な理由として、サービス向上、コスト削減を掲げる。しかし、その2つは対極に位置している。コスト削減により、企業や従業員がしわ寄せを受けるのであれば、明らかに弊害が出る。

▼先日、民間委託に関するテレビ番組で、複数の事例と課題が紹介された。群馬県太田市では、水道料金徴収はもとより、浄水場の運転・管理や漏水などの修理まで委託し、年間1・5億円ほどの削減効果を発現しているという。これらの考えは理解できるが、逆にこれまでは何だったのだろうか。

▼民間委託を積極的に導入してきた千葉県我孫子市では、街路樹の維持管理業務を委託している9業者に対し、毎年、コストの削減を求めているという。我孫子市に限らず、自治体の財政事情が厳しいのは分かるが、民間企業に「押し付ける」のであれば問題だ。

▼民間委託について、野村総研上級コンサルタントの宇都正哲氏は「官と民の対等なパートナーシップを構築していく流れが必要」と話している。だが、現実的には受託者は「請負」であり、字のごとく対等であることは難しい。「うすべにに 葉はいちはやく 萌えいでて 咲かんとすなり 山ざくらの花」(若山牧水『山桜の歌』)。日本の経済が再び花開くときは来るのだろうか。(埼玉・SW)。

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