コラム

2011/02/22

心を空にしてチャレンジ(長野・SK)

心を空にしてチャレンジ

▼建設産業が順風満帆の頃は「連日連夜除雪で眠いよ」と仕事後の酒を仲間と美味しそうに酌み交わし溌剌としていた。しかしある年、髪はボサボサで無精ひげを生やし、疲れ果てた彼がいた。歳は30才後半のはずだが、10も20も老け込んで見えた。

▼バブル崩壊の波は容赦なく彼の会社も襲ったのだと思った。翌年だろうか「俺、やっと身軽になったよ。今度飲みに行こうな」。身軽とは作業員を解雇したのだ。笑顔を見せるが、それは苦笑いだった。永年従事した作業員を解雇することは辛い選択だったに違いない。

▼その後、全く違う業種に転じたと噂に聞いた。堅実で聡明な彼だ、きっと新分野で捻り鉢巻でもして、一心に取り組んでいることだろうと想像していた。その彼が意気軒昂に建設業協会の新年祝賀会に突然現れたものだから「どうしたの今日は?建設業止めたのでは?」と唖然としてしまった。驚きをよそに彼は「何言ってんだよ。俺は建設業が好きなんだ。止めるはずないだろう」。彼は建設業を捨てていなかったのだ。

▼彼の発明は、まさに地方の土建業の人にしか思いつかない『ひらめき』だと思えた。開発のシナリオについて、軽快かつ楽しそうに語る彼の瞳は、希望と意欲に燃え、なによりもエネルギーに満ちていた。「完成時は是非取材に来てな」。筆者はその日が来ることを心待ちにしている。

▼人生はどうにもならないと思う境遇に堕ちることがある。しかし、その突破口は必ずあるものだと教えられた。そうしたときこそが自己改革のチャンス。心を空にして、自分を見つめ直すことも良い。思わぬことを発見するかも知れない。(長野・SK)

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