コラム

2011/03/05

祖母の料理に挑戦(東京・HM)

祖母の料理に挑戦

▼「豆しとぎ」という食べ物をご存知だろうか。青大豆をつぶして、米粉と練ったお菓子なのだが、カマボコぐらいの筒状に固め、これを1センチ程度の輪切りにして食べる。そのままでもいいし、焼いてもいい。揚げてもサクサクしておいしい。味は、もう「豆」そのもの。そこにほんのり甘みが加わる素朴な郷土料理だ。

▼八戸に住む祖母が作ってくれた。スーパーなどでは売ってないので、祖母が送ってくれるのを心待ちにしていた。その祖母が亡くなった時は、「もうあの味を食べられない」と寂しかった。

▼祖母がつくってくれたものは他にもある。ヨモギのお団子。これは子どもの頃、祖母と一緒に摘んだヨモギで作ってくれた。売っているヨモギ餅とは味も食感も違う。ドジョウ団子。ドジョウを炒った後につぶして、ネギや味噌を加えて団子状にし、汁物に入れて食べる。初めて食べた時、そのおいしさに驚かされた。

▼最近、それら祖母が作ってくれた食べ物の再現に挑戦している。母に話を聞いたりしながら、ドジョウ団子と豆しとぎを何度か作った。そこそこおいしいものができるようになったが、祖母の味はまだまだまだ出せない。

▼これも技能継承問題と同じだなと思った。受け継がなければ消えてしまう。今は、技術を持っている人が「伝えたい」と思っている。しかし、本当は引き継ぐべき世代が、「もったいない。身に付けたい」と思わなければ伝わっていかない。子ども達や若い世代へのそういう意識づくりも今後は必要になるだろう。祖母の味にほど遠い豆しとぎをかじりながら、「教えてもらっておけばよかった」としみじみ感じた。(東京・HM)

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