コラム

2011/03/09

顔が見えてこその安心社会(群馬・SS)

顔が見えてこそ安心社会

▼昨年のクリスマスに「伊達直人」名で群馬県前橋市の児童相談所へランドセルが寄付された。この出来事を皮切りに全国47都道府県へ爆発的に波及したタイガーマスク運動がまだ記憶に新しい。各マスコミがはやし立てたこともあって、日本列島をにぎわした善意の輪に心温まった人も多いのではないだろうか。

▼恵まれない人に対する慈しみの精神は確かに素晴らしいし見習いたい。そういった善意の輪が広がることはなにかと世知辛い世の中に明るさと癒しを与えてくれる。ただ、くだんのニュースに接して筆者は感動と同時に、匿名を善とする風潮に不気味さや違和感も感じた。

▼インターネットなどITが普及するにつれ、顔と顔を向き合わせる付き合いが減ってきたように感じる。「隣にどんな人が住んでいるかわからない」という声が良く聞かれる。こうした社会背景が相次ぐ振り込め詐欺の被害につながっているのは論をまたない。肉親の声すら聞き間違えてしまうことは不幸だ。

▼インターネットのサイトを利用した大学入試事件などは、進むIT化と、顔と顔を向き合わせない社会背景が融合し、究極の負の形となって現れてしまったものだと思う。相手の顔が見えないことで自制心が働かず、越えてはならない一線をためらうことなく越えてしまった印象だ。

▼慈しみの精神を持つことは常に見習うべきだし、便利になる世の中も諸手を挙げて歓迎すべきだ。だが、どれだけ良いことをされようと、相手の顔が見えないことには不安が付きまとう。昨今のニュースに接して、顔と顔を向き合わせる付き合いを大切にしていきたいと感じた。(群馬・SS)

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