コラム

2011/03/19

匿名の美談について(新潟・HT)

匿名の美談について

▼正体を明かさずに寄付を行う「タイガーマスク運動」は、あっという間に全国区となった。全国各地で匿名により寄付を行う類似例が、美談として紹介されている。ただ、この手の話なら、業界も負けていない。

▼先日、某施設が改築されたことにあわせて、新旧施設の内部見学会が行われた。直前に地元一般紙で紹介されたこともあり、予定を大きく上回る参加者が訪れる盛況ぶりであった。

▼新施設の工事は完了し、だいぶ前から供用を開始している。推察するに、見学者用の足場は、新施設を建設したK組が、この日のために、わざわざ新たに組み直したものであろう。今、思えば、足場を登る際に「頭、気をつけて下さい」と一声かけていただいた方の胸に、K組の社名が輝いていたような気もする。弊紙を含めて数社が取材に来たものの、この事実を紹介したものはない。

▼安全に施設を見学できたのは、足場があってこそなのだが、当然、足場に関する説明は無かった。県内大手建設会社のK組といえば、すぐに分かるだろうが、タイガーマスクに習ってK組の正体を明かすようなヤボなことはしない。ただ、組み直された足場には「安全即実行」の標語が掲げられていた。

▼タイガーマスク名で寄付運動が全国に広まった。しかし注目されていないが、タイガーマスク以前にも、寄付を続けていた団体や個人はいたはずである。今冬、新潟県は豪雪に見舞われ、除雪を行う建設業者の重要性がクローズアップされた。だが、建設業者の除雪についても今に始まったことではない。K組の足場のように、光は当たらなくとも、タイガーマスクはそこにいるのだ。(新潟・HT)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら