コラム

2011/05/25

天災は忘れた頃に(群馬・SN)

天災は忘れた頃に

▼「天災は忘れた頃にやってくる」という格言を残したのは、戦前の物理学者で随筆家や俳人でもあった寺田寅彦といわれている。防災に関する文章などによく用いられる有名な警句で、建設産業界においても安全大会などの場において主催者や来賓あいさつなどでたびたび紹介される。

▼寺田寅彦は随筆集の中で「人間も何度同じ災害に会っても決して利口にならぬものであることは歴史が証明する。東京市民と江戸町人と比べると、少なくも火事に対してはむしろ今のほうがだいぶ退歩している。そうして昔と同等以上の愚を繰り返しているのである」と忠告。

▼さらに防災対策ができていない事を指摘し、『天災が極めてまれにしか起こらないで、ちょうど人間が前車の転覆を忘れたころにそろそろ後車を引き出すようになるからであろう』と述べている。これらは、まさに、「天災は忘れた頃にやって来る」ということをいっている。

▼災害は文明が進むほどに増えていくという。しかし、人間は文明が発達するとその力で災害を封じ込むことができると自負してしまいがちだが、文明の発達とともに災害の要因も増えるので不完全な災害対策で安心できると思うな、自然をみくびるなと警告している。阪神淡路大震災では安全と考えられていた高速道路が横転し道路橋や鉄道橋が落橋、港の岸壁が崩壊した。

▼今回の東日本大震災を体験してしまった私たちが今後どのような対策を講じるのか、その評価は後世の人間に委ねられる。しかし、あまりにも今回の痛い教訓を平成の日本人は生かすことができなかった―とだけは言われないようにしたいものだ。(群馬・NS)

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