コラム

2011/06/11

逞しいニセアカシアの花(新潟・CY)

逞しいニセアカシアの花

▼つい先だってまで、ニセアカシアの芳香がそこここに漂っていた。房状の白い花はフジより少し控えめに下がり、「ニセ」の接頭辞を冠するには不憫(ふびん)な可憐さ。独特の香りで初夏を彩る。

▼ニセなどというからには、本家本元と比べて何か決定的な欠陥でもあるのだろうか。調べてみると、歌謡曲で歌われるのも、上質な蜂蜜が採れるのも実はニセアカシアのようだ。

▼黄色の花をつけるアカシアよりも早く日本に渡来し、和名はハリエンジュ。棘(とげ)を持ち、やせた土地でも丈夫に育つ。成長が早く耐久性も高いため、街路樹のほかにも燃料として、また砂防や土留め、枕木などに活用されてきた。

▼ところが今では事情が変わり、環境省指定の「要注意外来種」。かつて重宝された有益な特性が、その強さゆえに勢力を伸ばし、在来種を駆逐する懸念があるという。

▼国の特別天然記念物のトキもかつては田畑を荒らす害鳥だった。伝統行事「鳥追い」にもトキが登場する。豊穣を祈願し、子どもたちが歌いながら鳥や虫を追い払うものだが、「一番憎い鳥は、トキとサギとスズメと…」と歌われているほど。

▼侵略的外来種であろうと、天然記念物であろうと、懸命に生きていることに変わりは無く、名づけた側の利己主義が浮き彫りになっている。臆面もなく態度を翻す身勝手にあきれつつも、ウサギを一羽、二羽と数えたように、ある種のたくましさやおかしみを読み取れなくも無い。

▼どう呼ばれようと、駆除されようと、毎年初夏に咲くニセアカシア。花言葉を引くと「慕情」「親睦」「友情」とあり、最後に「頼られる人」と記されていた。(新潟・CY)

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