コラム

2011/06/23

猛獣が消えたテレビ(東京・IJ)

猛獣が消えたテレビ

▼娯楽として毎週欠かさず見るテレビ番組というものがない。ドラマもクイズも見ないし、好きだったお笑い番組は姿を消した。自分の趣向が変わったのかテレビが変わったのかは不明だが、いずれにしても、個人的にテレビ離れが進んでいる。

▼かつてフジテレビのディレクターとして「笑っていいとも」や「オレたちひょうきん族」などを手掛けた佐藤義和氏。著書『バラエティ番組がなくなる日』で、最近のお笑い番組について「未来を切り開こうという情熱や気概を感じさせる番組が見当たらない」と嘆いている。わくわくするような笑いが提供されていない状況を「この国の将来を暗いものにしてしまう」と懸念する。

▼佐藤氏が付き合ってきた芸人の多くは「猛獣」だったものの、爆発力があったという。一方、最近のお笑いタレントは頭が良く社会性もあり、ネタの完成度も高いが、新しい時代をつくるような破壊力がないと解説する。またタレントの能力を活かしきれないテレビ局制作側の質と能力も問題視する。

▼いまだ日本全体に明るさが感じられないのは、お笑い番組が面白くないからだろうか。それとも政治による将来展望が欠けているからなのか、原発問題が収束に向かわないからなのか、あるいは節電で照明を落としているために暗いのか。いずれにしても、被災地復興を起爆剤として、この国が新たな繁栄の道を歩むことに期待したい。

▼新しい世界を創造する者とは「世の中を斜めから観察し思考する者」と述べる佐藤氏の本を読み終え、自分を見つめ直してみる。明白なのは、自分が「猛獣」ではないということである。(東京・JI)

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