コラム

2011/07/12

後生に残していくもの(茨城・HS)

後世に残していくもの

▼先月、ユネスコは小笠原諸島の世界自然遺産登録を正式に決定した。国内の自然遺産は、これで白神山地(青森・秋田)、屋久島(鹿児島)、知床(北海道)に続いて4件目。この諸島は東京都小笠原村を形成しているから、日本の首都に自然遺産が誕生したことになる。

▼小笠原諸島は南北400?にわたる約30の島々からなる。硫黄島や沖ノ鳥島なども含まれる。民間の飛行場はなく、公共交通機関は片道24時間以上かかる船だけ。その船も発着は週一便程度なので、気軽に行けないのが残念である。

▼世界遺産登録の決め手となったのは、日本列島のように昔は大陸と地続きだったということもなく、「東洋のガラパゴス」と呼ばれるほど独自の生態系が分布していることだ。登録のメリットは観光客の増加とそれに伴う地域の活性化、と思いがちだが、実は小笠原の場合は周辺地域の開発に制限をかけ、希少な生物や植物の固有種を守ることだ。

▼人類共通の財産として、後世に残していくものがまた1つ誕生したことは非常に喜ばしい。かつて富士山は同じ自然遺産の登録を目指したが、ゴミの多さで断念し、今では文化遺産での登録を目指しているという。小笠原でも観光客の増加で貴重な景観が汚されないことを願わずにはいられない。

▼人類は、自然の中にある動植物に手を加えて生活の糧としている。それはこれからも続いていく必然である。世界遺産はその行為に待ったをかけるために必要なものだ。小笠原諸島が観光名所として活性化するのは良いことだが、これを契機に旅行者の環境保護意識が向上すれば、もっと良いことになるだろう。(茨城・HS)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら