コラム

2011/07/26

祖母の笑顔を来年も(茨城・NI)

祖母の笑顔を来年も

▼祖母は毎年、水戸の偕楽園と弘道館の梅の実販売を楽しみにしている。祖母は、購入した梅の実を、梅干や梅酒にして家族を喜ばせることが喜びなのだ。祖母が作った梅干は、渋さのなかにやさしい甘みがあり天下一品である。店頭販売しているものとは違った、おばあちゃんの味がする。

▼3月に発生した東日本大震災の影響で、偕楽園や弘道館でも地割れや歴史的家屋の倒壊など大きな打撃を受け、復興に向けた修復工事を計画している。しかし、震災から4カ月経過した現在でも、茨城県と国の間で復興費をめぐり論議の決着がついていない。

▼ことしで170周年を迎えた「弘道館」は1841年(天保12年)に徳川斉昭公により創建。1964年5月に国指定の重要文化財に指定され、これまで同省の所管財産を県や水戸市が管理を行っていたということに驚く。修復費用について県の見解は「57年前の国の通達によると国が全額持つと聞いている。是非実現させてほしい」と話す。

▼仮復旧した偕楽園で待ちに待ったことしの梅の実販売が先月行われた。昨年の豊作には及ばなかったものの、朝早くから風評被害も吹き飛ばす長蛇の列。筆者は朝5時に自宅を出発し、1袋300円の梅の実の袋を2つ購入し、早速、祖母のところに届けた。祖母は満面の笑みで「ありがとう」と喜んでくれた。

▼大自然は時に、われわれの想像を遥かに超えた形で、慢心した人間に警告を促す。しかし、そんな自然も祖母にとって年に一度の楽しみをもたらす。筆者は来年も、豊かな自然がはぐくむ梅の実の販売に駆けつけたいと、今から楽しみにしている。(茨城・NI)

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