コラム

2011/08/04

加計呂麻島の子どもたち(埼玉・HK)

加計呂麻島の子どもたち

▼「加計呂麻島」(かけろまじま)という島をご存知だろうか。鹿児島県奄美大島の南に位置する島で、まさに「離島の離島」といえる存在だ。アクセスは海路のみで、奄美大島最南端の町・古仁屋からフェリーを利用して25分の距離。人口は1500人程度で、少子高齢化が顕著化している。

▼学生時代、筆者はこの島に3度訪れた。島内の中学校統廃合に関する研究を行うためだ。研究拠点とした押角の就学児童は3人、小中高それぞれ一人ずつである。島内に高校が無く、さらに地区の小中学校も休校になったため、高校生は島外に、小中学生は村外の学校に通っている。

▼娯楽が少なく、人間関係や競争力が満足に得られない環境で、彼らは「外の世界」に敏感だ。インターネット普及などによる本土の文化流入に伴ってより身近になったこの島であるが、本土の地を踏んだことが少ない子どもたちにとって、筆者の出現は珍しかったに違いなかった。

▼都会の風景から筆者の経験に至るまで、本土であれば日常として受け入れられる事象が、彼らにとっては新鮮なようだった。逆に、我々よそ者にとっては最たる魅力である島の大自然と多様な生物だが、現地の人々にとって、これらはあくまで日常的な存在なのだ。

▼高校生に「少子高齢化では、いずれ有人島でなくなるかもしれない」と自らの見解を述べたことがある。すると彼はこう言った。「僕は進学したらこの地を離れるが、必ず戻ってくる」と。この言葉に、島の本当の魅力が秘められているように感じた。そして魅力と対峙した時、自分がどうしたいと考えるのかが重要だと気付かされた。(埼玉・HK)

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