コラム

2011/08/18

きっと考えているはず(東京・IJ)

きっと考えているはず

▼東日本大震災の復旧対策を盛り込んだ総額約2兆円の第2次補正予算が、7月下旬に成立した。内容は原発事故の賠償金や二重ローン対策、被災者生活再建支援など。警戒区域で避難所暮らしを続けている人々や津波で家が流された人々の、少しでも励みになってほしいと思う。

▼被災地の復旧・復興とともに「日本経済の再生」という声を多く聞く。復興そのものを日本経済の活力につなげようとするものだ。問題は、どうやって被災地再生と日本経済再生を結びつけるか。被災地のまちづくりや産業立て直しだけで経済全体の復活とはいかないだろう。

▼『地域再生の罠―なぜ市民と地方は豊かになれないのか?』(久繁哲之介著、ちくま新書)によると、地域再生策のほとんどは、専門家が推奨する成功事例の模倣によって失敗してしまうらしい。著者は、この成功模倣主義について「事例のほとんどが、実は成功していない」「まれにある本当の成功は異国や古い話であり、しかも模倣が極めて難しい」と問題点を指摘する。

▼経済的な豊かさばかりを追い求める人は「本質やビジョンに関心を示さない」。本質を考えない人は「他人の言うことや成功事例をうのみにする。ハウツー論にいきなり飛びつく」ということらしい。

▼復興まちづくりを契機とした、国の経済活性化というテーマが与えられた日本。模倣するような成功事例はないだろう。他国の言うことをうのみにしたり、ハウツー論にすがることもないだろう。しかし、政治によるビジョンがまだ見えないのはなぜだろうか。きっと今は、本質を考えているに違いない。そう願いたい。(東京・JI)

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