コラム

2011/09/03

郷土の守り神に感謝(新潟・KK)

郷土の守り神に感謝

▼越後平野の安全・安心を80年近くにわたって守り続けてきた信濃川・大河津可動堰(新潟県燕市)が、もうすぐ役割を終えようとしている。新可動堰の完成により11月にも新旧可動堰の切り替えが行われる見通しだが、7月の新潟・福島豪雨の際にはゲートを開放して大洪水を安全に流下させる重要な役割を担った。

▼今回の洪水対応が、おそらく最後の大仕事になったと思われる。記録的な雨量を観測した出水だったにもかかわらず、老朽化が進むなかで、その役割を全うした能力の高さには、あらためて驚かされる。

▼今から100年以上前に始まった人工河川・大河津分水路の工事は「東洋一の大工事」と呼ばれ、13年の歳月を経て1922年に通水を開始。しかし、5年後には分水路の水量を調節する自在堰が河床低下によって突如陥没したため、代替で造られたのが現在の可動堰。

▼新可動堰は日本最大級のラジアルゲート6門を備え、堰の長さは約1・6倍となる。建設現場は昨年9月以降、3回にわたって一般開放され、いずれも住民の関心が高く、数千人の見学者が訪れている。総事業費に約410億円を投じるビッグプロジェクトのため、事業費や構造物の大きさに驚く人は多いが、「無駄だ」という人はいない。

▼分水路右岸堤防上に可動堰を見守るように建てられた信濃川補修工事竣工記念碑には「人類ノ為メ國ノ為メ」と刻まれている。多くの人の願いと努力によって完成し、洪水から越後平野を守り続けてきた可動堰は、郷土を守るという先人の意志を受け継ぎながら、住民の期待を背負い、間もなく新しい守り神へとバトンタッチされる。(新潟・KK)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら