コラム

2011/09/28

第四の力「ペン」(群馬・SS)

第四の力「ペン」

▼「またか」と思うのと同時に、ここまでペンの力は強力なのかと改めて思い知らされた出来事だった。野田新政権発足後まもなく、東日本大震災の被災地を視察した際の重要閣僚による言動が報道された。その閣僚は瞬く間に辞任を余儀なくされた。

▼その閣僚は被災地を「死のまち」と表現した。加えて放射能を記者になすりつけるような仕草をしたようだ。これらに対して、マスコミ各社は否定的なニュアンスを交えて報じ、辞任への流れをつくった。当然世論もそれに同調するかたちとなった。

▼マスコミは「第四の権力」と位置づけられている。数々の悪を告発したり、これまで果たしてきた役割は大きい。が今回に限ってはいささかその権力が暴走したかのように思える。「死のまち」だけが切り取られ、「放射能」もいかにも伝聞形式で伝えられた。「放射能をつけちゃうぞ」「ほら、放射能」などと各紙の見出しが異なった。本人もそのような言動をとったとはっきり認めていなかったが、もはや続投を許す空気ではなかった。

▼第四の権力がマスコミなら、残る三権は行政、立法、司法。いずれも強大な力を有するが、この三権は三すくみの関係となっている。互いに監視しあい、その権力が暴走することを防ぐシステムだ。しかしマスコミを監視する第五の権力は存在しない。

▼この未曾有の危機の中に必要なのは、執拗な個人攻撃ではなく、なぜ被災地が「死のまち」のようになってしまったかを検証し、解決する手だてを導くことではないか。筆者も報道の端くれとして今回の件を反面教師に物事の本質をとらえていきたいと考えさせられた。(群馬・SS)

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