コラム

2011/10/13

地域再生の強い思い(埼玉・KH)

地域再生の強い思い

▼JR前橋駅北口前に降り立つと、思わず寂しさを覚えた。群馬県都・前橋の玄関口としてはあまりに閑散としていたからだ。昨年8月、駅前のシンボル的存在だったイトーヨーカドー前橋店が閉鎖。残ったビルの新テナントは未定。駅北口から中心市街地を結ぶ並木通りを歩くと、シャッターの下りた店が目立つ。来年2月の前橋市長選挙は「市街地再生」が争点になるだろう。

▼「地域再生」を考えたとき、数年前、群馬県吾妻郡六合(くに)村(現在、中之条町に吸収合併)で花つくりを取材したときのことを思い出す。総面積の90%以上が山や原野のこの村は、耕地の大部分が傾斜地のため、農業機械を使えず、高冷地で生産性も低くかった。そのため、地場産業が育たず、住民の多くは村外へ職を求め、過疎化が進んでいった。

▼そんな時、村を訪れたフラワーデザイナーの中山昇さん(故人)は、意外な物に価値を見出す。それは馬の餌置き場などに咲く山野草。試しに東京の市場へ出品すると1本180円の高値が付き、村は大騒ぎになった。地場産業の育成に障害だった六合の気候。実は花のメッカ「オランダ」に類似しており、平地では育たない花を咲かせたのだ。

▼山野草の出荷から始まった六合の花つくりは、高齢者を中心に取り組まれ、年間売上1・5億円超までに成長する。

▼何十年もその土地に住む人々が気づかず、たまたま訪れた部外者が見出した六合の価値。広い角度から物事を捉える重要性を教えてくれる。アイデアを活かし発展させるには、「この土地を再生したい」と強く願う多くの住民の想いが必要だということも。(埼玉・KH)

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