コラム

2011/10/14

明治末期の日本人(茨城・KK)

明治末期の日本人

▼昭和40年代、「明治は遠くなりにけり」という言葉が流行した。ちょうど明治維新から100年目にあたる1968年(昭和43年)各地で明治百年記念祭が行われたことを記憶している。奇しくも今から100年前は明治44年。明治も末期にあたる。

▼ここのところ「『坊ちゃん』百年」など、出版界では「百年本」が刊行されている。明治40年代に、日本の近代文学は一気に開花したと言われている。島崎藤村、田山花袋をはじめとする自然主義文学、武者小路実篤、志賀直哉などの白樺派、夏目漱石、森鴎外らの余裕派などが活躍、近代文学の枠組みが整ってきた。

▼日露戦争が勃発して100年目の2004年頃から「日露戦争百年」関連の書籍が店頭に並ぶようになった。戦争は避けるべきものであることは言うまでもない。しかし、その残酷な戦争の中にあっても、称賛されるべき精神や行為は存在したのだろう。

▼司馬遼太郎の代表作の長編歴史小説『坂の上の雲』は40年もロングセールスを続ける。近代国家としては基盤が脆弱(ぜいじゃく)な祖国を守るために、自己と国家を同一視し、自らが国家の一分野を担う気概を持つというシンプルな愛国心が全編を貫いている。また、明治の気風は、敵を敬い、捕虜を厚遇し、慰霊を欠かさなかったとも言われている。

▼「日露戦争の頃こそ、日本人が最も輝いていた時代」と以前聞いた。個人的にも同意見だ。先の見えない閉塞感の中で、最近の日本人はすっかり自信を失っている。われわれ現代人は、生き方の鑑として、100年前の明治末期の精神文化を見つめ直し、困難な時代を切り拓くよすがとしたい。(茨城・KK)

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