2011/12/13
「for you」の持つパワー(群馬・HI)
「for you」の持つパワー
▼人と物の流れが増える12月。この時期になると、毎朝決まった道で、あるトラックとすれ違う。そ
の運転席には見知った顔が見える。この人は、筆者がかつて運送業界に身を置いていたころ、パート
ナーを組んでいた先輩である。
▼彼は、繁忙期の12月になると、別の運送会社から助っ人に来ていた。筆者は、その先輩と12月の1
カ月間の期間限定で、4tトラックでデポ(配送拠点)を周り集荷するのが仕事だった。
▼車中での会話は、一方的に筆者が話し、先輩は常に聞き役だった。不満や愚痴に「うんうん」とう
なずくだけだった。その不満や悩みは、その場では解決しなかったが、後日には不思議といつも解消
していた。先輩の運転は常に沈着かつ冷静、法定速度を守り、優しさを感じさせるハンドル操作、荷
物の扱いも丁寧だった。疲れ切った一日の終わりに飲む缶コーヒーのうまさもこの時に知った。その
時に言われる「ご苦労さん」の一言が、疲れを充実感に変えた。
▼先日、経営者や営業マンを対象としたセミナーで、講師が『for me』よりも『for you』と力説。
「自分のためよりも、お客様のためにと考える方が、圧倒的に良い営業成績を残す」と言うことだ。
これを聴いた時、永年の疑問が氷解した。
▼筆者が社会人になり、先輩から教わったもっとも大切なことは、この『for you』だったと。先輩
は運転も荷役も、常に顧客優先のスタイルだった。その動機が『for me』と『for you』では、周囲
に与えるインパクトが全く異なる。あれから20年、先輩の顔に年齢は刻まれたが、『for you』の姿
勢は変わらないなと、車のガラス越しに感じた。(群馬・HI)