コラム

2012/01/27

大人のための絵日記(茨城・KK)

大人のための絵日記

▼私事で恐縮だが、暮れに、物置の整理をしていて、22歳の娘と18歳の息子の小学校低学年の時の絵日記帳を見つけた。ひと口に絵日記と言っても、子どもによって文章が得意か、絵が得意かで、どちらにウェイトが置かれるか分かれるようだ。ちなみに娘は前者、息子は後者だったが。

▼日記文学の歴史は古い。平安時代の土佐日記、蜻蛉(かげろう)日記、紫式部日記など仮名文の作品が広く知られる。近現代では、永井荷風の『断腸亭日乗』が傑作との評価が高いが、有名無名を含めて、隠れた名作は数知れない。

▼今年生誕120周年を迎えた大正・昭和初期の洋画家・岸田劉生。『麗子像』で有名な彼は、大正9年から6年間、1日も欠かさず、絵日記をつけていた。来客の似顔絵や日常生活のひとコマが挿絵として添えられている。『劉生絵日記』(龍星閣)は巨匠の日記を、庶民目線の読みものとしても楽しませてくれる。

▼イラストレーター・沢野ひとしの『旅絵日記』(新潮社)、エッセイスト・江國滋『スペイン絵日記』(同)英国の陶芸家・画家・バーナード・リーチの『日本絵日記』(講談社)など優れた絵日記文学も少なくない。それらの多くが紀行文、旅行記であるのに対し、評論家・永田久光の『サラリーマンの絵日記』(学風書院)は、社会人の生活をエッセイ風にまとめたもの。

▼子どもの頃、絵日記は先生に見せるためのもので、内容はガラス張りだった。しかし描かれた絵はその1日を象徴するものだったはずだ。今年の日記には、印象に残るひとコマのカットを添えてはいかがだろうか。(茨城・KK)

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