コラム

2012/02/10

アンチヒーローと一族の絆(茨城・KK)

アンチヒーローと一族の絆

▼2012年のNHK大河ドラマ『平清盛』が始まった。歴史上の人物は大なり小なり英雄だが、「平家にあらずんば人にあらず」、「おごる平家は久しからず」―『平家物語』の中心人物・平清盛は傲岸不遜の代表的人物と、評価は芳しくない。

▼平治の乱(1159年)で清盛がその命を助けたために、後の平家滅亡の仇となった源頼朝。彼もまた、冷徹非情な政治家と評されているが、国内外の識者の評価は極めて高い。米誌『タイム』は、頼朝を12世紀最大の偉人の1人として選んでいるほどだ(2000年10月)。

▼自らも『平家物語』(小学館)を著した作家の森村誠一氏は、平清盛を徳川家康に匹敵する軍事、政治そして経済の天才と高評価。清盛が戦らしい戦をしたのは、平治の乱くらいだ。源義朝(頼朝の父)に幽閉された二条天皇と後白河上皇を救出し、一転官軍となった清盛は一気に源氏を破った。それも名簿〈ルビ〉(みょうぶ)/ルビ〉と呼ばれる降伏文書を差し出し、敵を油断させてからの攻撃だったというのだから、その策士ぶりには恐れ入る。

▼清盛は戦で奪った敵の領地を開拓するという旧来の経済政策よりも、海外に目を向けた。彼の代表的業績は、日宋貿易とそれに伴う瀬戸内海航路の整備だろう。大輪田泊(現在の神戸港)の開設はその後の瀬戸内海流通に、また、宋銭の輸入は、わが国の貨幣経済の発展に大きな役割を果たした。

▼一門の独占的栄達、栄華ゆえ、アンチヒーローの代表格とされる清盛だが、平家は家長から郎党に至るまで、一堂に集って暮らしていたという。今回の作品のテーマは「一族の絆」だという。今年の大河に大いに注目したい。(茨城・KK)

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