コラム

2012/02/17

ツンデレも立派な個性(茨城・KS)

ツンデレも立派な個性

▼「ツンデレ」という言葉がある。?ツンツンデレデレ?の略で、普段は気を尖らし冷酷な言動で振る舞うが、特定の場面でか弱く甘えたり、穏やかになる人格を表す新生語だ。もともとはサブカルチャーの聖地、秋葉原のオタク用語で、アニメのキャラクターでは常連の性格だという。

▼先日、純文学の新人に与えられる芥川賞の受賞会見が開かれたが、このとき、天邪鬼〈あまのじゃく〉な態度で一躍注目を浴びたのが田中慎弥氏。「(受賞は)当然」「もらっといてやる」などの仰天発言には息をのんだ。

▼少し前では、主演映画の試写会時の会見で、記者の質問に「別に…」と終始不機嫌な態度を見せ付けた女優もいた。否定的な意見も多かったが、今ではその不機嫌態度を使ってCMに出演。見事に宣伝武器にしていて、田中氏との共通項を感じる。受賞作『共喰い』は会見後に注文が殺到。早くも10万部を出版したという。特に田中氏の地元である山口県下関市の書店では、異例の大量入荷だったにもかかわらず、1日で完売した。

▼田中氏は地元では、あの会見の様子からは想像もつかないような、やさしく穏やかな青年のようだ。不機嫌会見について古くから知る友人や高校時代の恩師、母親は、みな口をそろえて「てれ隠しだ」と言う。

▼会見で、「受賞したという連絡を誰にしましたか」の問いには、それまでの面倒臭そうな様子と打って変わった口調で「母です」と答えていたのが印象深い。また、退席時の深々とした丁寧なお辞儀からも、奥底の良心、受賞の喜びがわずかながらうかがえる。彼こそツンデレの極み。見事な?でれ隠し?である。(茨城・KS)

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